函館ナンパ【初函館即】
5月の連休。雪は溶けていたが、まだ肌寒さが残る季節だった。とてもよく晴れた日にウサギは函館にいた。
北海道にも桜前線が到達したというニュースを耳にして、はるばる旭川から花見にやってきたのだ。
昼ごろ函館に着いたウサギは、ラッキーピエロに入った。ラッキーピエロとは函館にしか展開していないファミレスだ。店に入り、全国ご当地バーガーNo.1に輝いた“チャイニーズチキンバーガー”のセットを注文した。店員が運んできたセットはバーガー、ポテト、ドリンクのベーシックな構成だ。ポテトには溶けたチーズがかけられいて食欲をそそった。最近腹がたるんできたウサギは、カロリーに罪悪感を抱きつつ完食した。
店を出ると、怪しい自販機が視界に入った。見たことのない商品が並んでいる。
「ラッキーガラナ?」
真っ黄色の缶の中央で、ピエロがこちらを見つめている。限定商品なのだろう。何かのルーティーンに使えるかもしれないと思ったウサギは、2缶購入した。
腹が満たされたウサギは、五稜郭に向かった。
駐車場は満車で、たくさんの観光客で賑わっていた。満開にはまだ少し早かったが、敷地いっぱいの桜は春の訪れを感じさせてくれた。展望タワーには鯉のぼりが泳いでいた。ウサギは、写真を撮りながら五稜郭を一周し、桜ソフトを食べ、タワーにも登った。
観光に満足したウサギは、夜のナンパに備えて拠点のホテルへと移動を開始した。五稜郭を後にしようと歩きだしたとき、1人で歩いている女の子を見つけた。若い女だ。
荷物を抱えナンパに適した服装でもなかったが、ウサギは声をかけた。
「こんにちは。1人で観光ですか?」
「いいえ、観光ではないです。こっちに住んでいます。」
若干驚きつつも普通に答えてくれた。反応は悪くない。話を聞くと、友達を探しているとのことだった。彼女の名前はマミ(仮)で、函館の大学に通っている。ウサギは観光目的来ていることを告げ、マミの友達を探しながら一緒に五稜郭を歩くことを提案した。
歩きながら話をした。友達とは待ち合わせているわけではなく、大学のイベントを見にきたと言った。恋愛関連の話も聞き出す。マミはちょうど一週間前に彼氏と別れたところだった。
ウサギは幸運に感謝した。こんなに良いターゲットを一声掛け目に引くだなんて。
話が盛り上がったところで、おもむろにウサギはマミと手を繋いだ。
「え?何で手を繋ぐの?友達に見られちゃうよ。」
「別にいいでしょ?」
口では反抗したが、嫌がるそぶりは全くなかったので構わず手を握り続ける。
「昔から押しに弱いんだよね…」
この言葉に、ウサギは即を確信した。(それは、押してください、という意味でおkだよね?)
俄然強気になったウサギは、夜一緒に飲もうと誘った。しかし、頑なに断られる。絶対にいけると思っていたのに断られたウサギは、違和感を感じた。どうしてもダメだと言うので、今からお茶するのはどうかと提案したらすんなり通った。
ウサギは移動しながら作戦を練り直した。[飲み(和み)➡︎カラオケ(ギラ)➡︎ホテル( ゚Д゚)ウマー]が不可能になった今、どうすべきなのかと。
五稜郭から街までは、路面電車で移動した。この電車も函館名物だとマミが教えてくれた。
「俺荷物置きたいから、ホテル寄っていい?」
「うん。」
荷物があったウサギは、駅までの移動中に確認をとっておいた。
マミの案内で駅に到着し、電車に乗った。街の雰囲気と路面電車はよくマッチしていた。ホテル最寄りの駅までの間、ウサギはカメラに興味を示したマミの首にかけさせて使い方を教えてあげた。
駅からホテルまでは、歩いてすぐだった。
チェックインのため、ウサギは荷物をマミに預けた。簡単な手続きを終えて、部屋に向かった。
「行くよ。」
「私も行くの?」
「荷物置かないと。」
マミの首にはカメラ、手にはウサギの荷物があった。
部屋に入り、荷物を置き、ウサギはキスをした。マミも応える。
「こうなることを期待しちゃうから、夜は嫌だったの。」
「なんだそれ(笑)。」
女心は永遠に理解できないだろうなと感じながら、ウサギはセックスした。